~地域の安全・安心をめざす~

ようこそ、西濱防災ネット技術事務所は、地域の安全・安心をめざす事務所です。 

月刊技術士

月刊技術士

  • 2017/3/7日 月刊「技術士」3月号に掲載されました。
    画像の説明
    画像の説明
    画像の説明
    画像の説明
  • 2008/5月 月刊「技術士」5月号に掲載されました。

「技術士2008.5 情報技術(IT)シリーズ」より掲載
・・挿図は省略しています。(図は、防災行政無線システム参照)

月刊技術士
私が”月刊技術士”に投稿した「防災無線システム」の資料の概略版です。

防災無線システムの現状と災害情報の伝達
The present status of the disaster radio systems and information necessary to an emergency
                         西濱 靖雄    Nishihama  Yasuo
 災害時の通信手段の確保のため、国や地方自治体は防災無線システムを構築している。
大規模災害時には、住民が自ら危険を判断し、すばやく避難行動をとらなければならない。そのため危険を判断する情報を、速く確実に伝えるために多くの伝送媒体(メディア)を活用することが重要である。

In order to secure means of communication in case of disasters, country and local governments construct disaster radio systems.
At the time of a large-scale disaster, residents have to judge danger themselves and have to take refuge action quickly. Therefore, in order to give quickly the information which judges danger certainly, it is important to utilize many transmission medium

キーワード:防災無線システム、災害情報、情報伝達、地域住民、デジタル同報無線システム

1はじめに
我が国は、地震、津波、台風、豪雨など多くの自然災害に見舞われてきた。 
平成7年1月17日の阪神淡路大震災以降にも新潟県中越地震(H16.10)、新潟県中越沖地震(H19.7)、新潟・福島豪雨災害(H16.7)、台風23号豪雨災害(H16.10)など、多くの自然災害が発生している。  
“災害から生命と財産を守り、被害を最少限に抑える”ために、国、地方自治体などは、災害情報の伝達手段の確保を目的として防災無線システムを構築している。行政から住民への情報伝達、住民から行政への情報収集、更に地域住民相互間の連携を確実に行なうことが被害軽減の鍵となる。
2防災無線の現状
2.1 法的根拠
(1)災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第55条に、都道府県知事の通知要請等と、第56条に、災害に関する予報若しくは警報の伝達は市町村長の責務とされている。1)
(2)電波法(昭和25年法律第131号)第74条に、非常の場合の通信の確保、および第74条の2に非常の場合の通信体制の整備が制定されている。
(3)武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)第47条に、市町村長は国民保護に係る情報を受けた際には、防災行政無線等により速やかに住民等に伝達するように努めなければならないとされている。

2.2 我が国の防災通信網
我が国の防災通信網は、国、都道府県及び市町村の各階層から構成されている。(図1参照)
①中央防災無線、②消防防災無線、③都道府県防災行政無線については説明を省略、以下に④市町村防災行政無線システムについて述べる。
図1 防災無線システムの全体構成1)

2.3 市町村防災行政無線システム
 市町村と住民を結ぶネットワークであり、平常時は行政用、災害時は防災用として活用され“防災行政無線システム”と称されている。 (図2参照)
図2市町村防災行政無線システム(概略)
市町村を基本単位として①同報無線、②移動無線、③地域防災無線等で構成されている。
(1)同報無線は、市町村役場から防災情報や、一般行政のお知らせ等を、管内各集落に設置した屋外拡声子局のスピーカーから住民に対して広報することができる。また各家庭に設置した戸別受信機で直接受信することもできる。H13年度からは、デジタル化が始まり市町村役場、及び拡声子局の双方から通信が出来る双方向システムとなった。
(2)移動無線は、市町村職員、関連機関の職員間の連絡通信のために用いられ、市町村役場に親となる統制局を設置し、各機関に半固定の無線機を置くと共に、移動中の職員のため携帯型無線機や、自動車に車載型無線機を設置する。H13年度から260MHz帯のデジタル移動無線が追加された。
(3)地域防災無線は、地域の生活関連機関、防災関連機関の横通しのために導入されている800MHz帯アナログMCA方式であったが、周波数再編成で今後は260MHz帯デジタル移動無線に移行する。
(4)市町村防災行政無線の整備は、平成19年3月末現在、全市町村(1,827)中、同報系については75.21%(1,374市町村)、移動系については85.17%(1,556市町村)となっている。1)
MCA(Multi Channel Access System:複数の周波数を多数のユーザが利用する方式)

3 デジタル同報無線システム
3.1 基本構成
 市町村防災行政無線システムを構成する固定系のシステムであり、従来のアナログ式同報無線を周波数有効利用の観点、および災害時の運用等を考慮し、同時に複数の音声、データなどが伝送可能なようにデジタル化を行っている。(図3参照)
図3デジタル同報無線システムの基本構成(概略)

3.2 主要機能
・双方向通信ができる(災害現場から被災連絡可能)
・データ伝送ができる(文字伝送、画像伝送、テレ 
 メータ伝送可能)
・音声、データの同時使用ができる(一斉通報中で
 も被災連絡、テレメータ伝送等が出来る)

3.3 技術的条件
・周波数帯   :60MHz帯(54~70MHz)
・チャネル間隔 :15kHz
・空中線電力  :10W以下
・伝送速度   :45kbps以下
・変調方式   :16値直交振幅変調(16QAM) 
・通信方式 :時分割多元接続方式(TDMA-TDD)
 QAM(Quadrature Amplitude Modulation:振幅と位相を変化させる高効率な変調方式)

TDMA-TDD(Time Division Multiple Access- Time

Division Duplex:複数の情報を、時間を分け合い
ながら双方向伝送する方式)

3.4 多重伝送
1フレームを時間的に6スロットに分割し、拡声通報用に4スロット割当て、残り2スロットを連絡通話、またはデータ伝送用に割当てる。このため拡声通報時でも同時に被災情報等の収集等が出来る。図4にタイムスロット組み合わせイメージを示す。
図4 タイムスロット組み合わせイメージ

3.5 音声コーデック
 音声信号は16kbps音声コーデックによりデジタル化し、伝送途中の符号誤りにも有効な伝送が可能なように9.6kbpsの誤り訂正符号を組み合わせ25.6kbps(16+9.6=25.6)として図4に示すように4スロットで伝送している。

4 災害時の情報伝達
4.1 災害情報とは(主として住民が求める情報)2) (1)災害時に被害から逃れ、2次災害を避ける  
  ために役立つ情報
 ・地震の規模や発生場所、余震は?
 ・家族や知人の安否は?
 ・ライフラインの復旧状況?復旧見通しは?
・行政はどのような支援をしてくれるか?
 ・水・食料はどこに行けば手にはいるか?
(2)災害が起きる直前情報
 ・行政からの避難準備情報、避難勧告、避難指示
 ・テレビ、ラジオ、FM放送等の災害情報等
(3)災害に関する知識、知恵
 ・過去の災害からの教訓、言い伝え等
 ・非常時の備え、啓発等
などの情報がある。

4.2 災害情報に求める機能
・迅速、正確、確実、公平に伝える
・住民に分かり易い言葉で伝える
・輻輳する災害情報を短期間に伝送するための
伝送手段と、情報作成時間の短縮(効率化)
・時間と共に変化する災害情報に対応できる能力
などが必要となる。

5 実施例
 著者がシステム構築の一部にかかわった市町村防災情報システムの一例を示す。3)

5.1 システムの構成イメージ
同報無線システムを基本構成とし、コミュニティFM局、ケーブルテレビ局(CATV局)、市町村のホームページ、携帯電話メール等、異なるサブシステムを複合的に組み合わせている。(図5参照)
図5 システム構成イメージ

5.2 サブシステムの組み合わせ
システムを構成するに当たっての基本的な考え方とサブシステムの組み合わせを図6に示す。3)
図6 基本的な考え方とサブシステムの組み合わせ

5.3 実施例の情報の流れ
・市町村災害対策本部に集まった情報は、同報無線システム、コミュニティFM放送、CATV放映、携帯メール、ホームページ等で配信し、地域住民からは同報無線システムの通話機能や、インターネットを通じて地域の災害情報を収集する。 その他、大規模な自然災害や武力攻撃などの緊急事態を覚知した場合に、国から直接配信される緊急情報を、衛星通信を使って受信し、住民に伝える「全国瞬時警報システム(J-ALERT)」で構成される。(当初計画では未実施)図7に情報の流れを示す。3)
図7 情報の流れ
6 今後の課題 
6.1 同報無線システムの補完システム
 災害時、緊急時には多くの情報が輻輳する。そのため同報無線システムは極めて有効な手段となり、自治体に導入を促している。しかし財政的理由等により早期整備がなかなか進まない。 このため同報無線の代替えとして補完するシステムが検討され、たとえばMCA陸上移動無線、260MHz帯デジタル移動無線、一般無線機等を利用した各種通報システム等が検討されている。 図8にMCA陸上移動無線を活用した同報通信システムの一例を示す。4)
図8 MCA陸上移動無線を活用した同報通信系統図

6.2 住民相互間の情報伝達
 災害時に、住民は知り得た情報を基に、自ら判断し行動を起こさなければならない。
 災害時には地域の隣人同士の相互協力(共助)が大事であり、常日頃から住民相互のコミュニケーションを確立しておくことが重要である。
 人と人を繋ぐツールとして、例えば地域SNSのようなインターネット利用ツールも各種使われている。5) 行政主体で整備する防災無線システム(公助)と併せて活用することが望まれる。  
SNS(Social Networking Service:コミュニティ型の会員制サービス)

7 まとめ
・災害時には、時間とともに変化する情報を的確に収集することが極めて大事である。
・短期集中する情報発信には、同報無線システムは
極めて有効である。
・防災無線システムだけに頼ることなく、あらゆる
情報伝達メディアを複合的に組み合わせること
が重要である。
・行政は、住民に判かり易い情報を発信し、住民は自ら判断できる知識を持つことが重要である。
・防災無線システムと、それを使う行政、住民の組み合わせで、被害を少なくすることが可能となる。

〈引用・参考文献〉
1)「電波利用システム,防災行政無線」,電波利用ホームページ,総務省,2008
2)防災士教本:日本防災士機構,平成17年度版
3)西濱靖雄:「安心安全な社会実現のための防災セミナー」,信越総合通信局,2006
4)「MCA同報通信システム」カタログ,西菱電機,2007
5)庄司昌彦:地域SNS最前線,株式会社アスキー,2007

企業支援に戻る

powered by Quick Homepage Maker 4.20
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional